2024/5/25
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「遺留分」について考える~その1 遺留分侵害額請求権と算定について |
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「遺留分」って何ですか? 日本の民法では、遺言によって奪うことのできない、相続人の「最低限の取り分」を保証しています。 この最低限度の取り分を遺留分といいます。 そして、他の者への遺贈や贈与により、その遺留分を侵害された者を遺留分権利者と呼びます。 【1)遺留分侵害額請求権 遺留分権利者が、遺留分について侵害された金額を「受遺者」又は「特定財産承継遺言により財産を承継した相続人」又は「相続分の指定を受けた相続人」又は「受贈者」に対して金銭の支払いを請求することができる権利のことをいいます。 ①遺留分侵害額請求権の効力は金銭請求権(債権)です。 ②法的性質は「形成権(一方の当事者の単独の意思表示のみによって法律効果を生じさせることのできる権利のこと)」です。 ③特定財産承継遺言とは、遺産に属する特定の財産を共同相続人の1人又は数人に「相続させる」旨の遺言のことです。 【2】個別的遺留分(各相続人に保証された「最低限の取り分」)って・・・いくら位なの? 遺留分を算定するための財産の価額×総対的遺留分×法定相続分=個別的遺留分になります。 ①遺留分を算定するための財産の価額は、どう計算するの? 「被相続人が相続開始時に有した財産の価額+贈与の価額ー相続債務の全額」になります。 ②贈与の価額って・・・何のこと? ・受贈者が相続人の場合は? 「特別受益に該当する贈与」かつ「相続開始前の10年間にした贈与」の価額のことを言います。 ・受贈者が相続人以外の場合は? 「相続開始前の1年間にした贈与」及び「被相続人と受贈者の双方が遺留分権利者に損害を与えることを知りながらした贈与」の価額になります。 ・負担付贈与の場合は? その目的の価額から負担の価額を控除した価額のことです。 ③総体的遺留分(遺留分を算定するための財産の価額に対する割合)は? ・直系尊属のみが相続人の場合➡3分の1 ・それ以外の場合➡2分の1 【3】遺留分侵害額の算定について 個別的遺留分ー遺留分権利者が受けた遺贈・特別受益ー遺留分権利者が取得すべき遺産の価額+遺留分権利者が承継する相続債務額=遺留分侵害額(請求権)となりますおさらい。 ここまでの重要ポイントをおさらいとして解説しますと・・・ ①遺留分を有する全ての相続人について、この計算式で遺留分侵害額(請求権)の有り無しを確認可能です。 計算した金額が遺留分侵害額(請求可能額)であり、計算した金額がマイナスとなる者は遺留分侵害額請求権がないことになります(逆に遺留分を侵害している者ということになります)。 ②遺留分権利者が受けた遺贈・特別受益のうち、特別受益については、個別的遺留分算定の箇所で記載した特別受益(前記【2】②を参照)と異なり、相続開始前の10年以前のものも含まれるので、注意が必要です。 ③遺留分権利者が取得すべき遺産の価額については、指定相続分の定めがある場合は、その定め通りに算定した価額であり、常に「法定相続分にて算定した価額」というわけではないので、注意が必要です。 ④遺留分権利者が承継する相続債務も、指定相続分の定めがある場合は、その定め通りに算定した価額であり、常に、「法定相続分にて算定した額」というわけではないので、注意が必要です。 次回は、遺留分侵害額の負担の順序・留意すべき事項について解説します! *参考資料=「一般社団法人日本遺言執行士協会」 |
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