2024/5/30

「遺留分」について考える~その2 遺留分侵害額の負担の順序と侵害額請求権の留意について

遺留分侵害額の負担の順序(請求の相手方の順序)は?
 
受遺者受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する。
 
受遺者とは=「遺贈」を受ける人のこと
受贈者とは=「財産を贈与」してもらう人のこと
 
②受遺者が複数あるときは、その目的の価格の割合に応じて負担します(但し、遺言者が遺言で別段の意思を表示することが可能です)
 
③受遺者が複数ある場合でその贈与が同時にされたものであるときは、その目的の価格の割合に応じて負担します(但し、遺言者が遺言で別段の意思を表示することが可能です)
 
④受贈者が複数あるときは、後の贈与に係る受贈者から順次前の贈与に係る受贈者が負担します。
 
遺留分侵害額請求権について留意すべき事項は何があるの?
 
①相続の開始時点で相続財産の調査(相続時の時価で計算する)が必要です。
 
②相続人を確定する必要があります。
 
③遺留分権利者は、受遺者や特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人や受遺者に対して、遺留分侵害額請求の意思表示書面でも口頭でもよい)をすれば良いが、実務上は意思表示「したか、しなかったか」の争いを避けるために内容証明郵便を利用します。
 
④対象となる遺贈、贈与には、停止条件付のものも含みます。
 
停止条件とは=特定の条件が満たされたときに、法律行為(例えば契約)の効果が一時的に発生する、または再開する条件のことを指します。

もっと簡単に言うと、何かの約束や契約が、ある特定の「もしも」が起きたら、約束や契約が成立するというルールです!

停止条件も日常生活の中でよく見受けられます。

例えば、妻と「私が1級FP技能士試験に合格したら、新しいバイクに買い替えるよ」という約束をします。

ここでの「私が1級FP技能士試験に合格したら、新しいバイクに買い替えるよ」というのが停止条件にあたります。

つまり、条件が満たされる(私が1級FP技能士試験に合格する)と、(新しいバイクに買い替える)という契約(約束)の効果が発生し、実際に新しいバイクに買い替えることになります!!

このように停止条件は、条件が満たされた際に、それまで保留されていた契約や約束が有効になるという点で特徴づけられます。

⑤対象となる遺贈、贈与には、負担付のものも含みます。

負担付贈与とは=受贈者(贈与を受ける人)が債務や負担も同時に引き受けることを条件として、贈与者(贈与をする人)から資産を譲り受けることです。
 
また負担付贈与は受贈者と贈与者のお互いの合意によって成立する契約であり、資産を譲り渡す際の条件である債務や負担については、双方の合意があれば自由に設定することができます。もし受贈者が当初合意した条件を履行しなかった場合、贈与者は契約解除ができます。
 
⑥裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、遺留分侵害額の全部又は一部の支払いにつき相当の期限を許与することができます。
 
⑦遺留分侵害額を負担すべき受遺者又は受贈者の無資力によって生じた損失は、遺留分権利者の負担に帰する。
 
⑧遺留分を侵害している者(遺留分侵害額を負担する者)が、遺留分権利者が承継すべき相続債務を消滅させた場合は、その消滅額を遺留分権利者へ支払うべき金額(負担額)から差し引くことができます。
 
 
次回は、遺留分侵害額請求権の消滅時効・放棄・遺言の効力について解説いたします!
 
*参考資料=「一般社団法人日本遺言執行士協会」