2024/6/5

「遺留分」について考える~その3 遺留分侵害額請求権の消滅時効と遺留分の放棄・遺言の威力について 

遺留分侵害額請求権の消滅時効はいつ?
 
遺留分侵害額請求権は、次の場合に時効によって消滅します!!
 
消滅時効とは=権利を行使せずに一定期間が経過すると債権を消滅させることができる時効制度のことです。
 
令和2年4月1日施行の民法改正によって、債権の時効期間などの消滅時効に関する規定が大きく変わりました!!
 
①遺留分権利者が「相続の開始」と「遺留分を侵害する贈与や遺贈があったこと」を知った時から1年間行使しない時。
 
②「相続の開始の時」から10年を経過したとき。
 
*注意点は、相続人の1人が葬儀の席で「遺言に従って全て自分が相続する」と宣言しても、他の相続人が「遺留分を侵害する遺贈があったこと」を知ったかどうかは不明であることです。
 
また、遺留分権利者が遺言執行者から「相続の開始」と「遺留分を侵害する贈与や遺贈があったこと」を知らされ、直ちに遺言執行者に遺留分侵害額請求の意思表示をしても効力はない。➡遺留分侵害額を負担する者に対して、直接、意思表示をしなければなりません。
 
遺留分の放棄はどうするのですか?
 
遺留分は、家庭裁判所の許可を得て、相続の開始前に放棄することができます。
 
例えば、父親が家業を継ぐ長男のため、父親名義の不動産を全て長男に相続させたいと考え遺言を書いても、二男が遺留分侵害額請求をすると、遺言を残したことが却って長男を苦しめることになる可能性があります。
 
そこで、二男にはあらかじめ事情を話して現金やほかの財産を与え、遺留分を放棄させたうえで遺言を残せば、将来、争うことなく相続をすることができます。
 
注意=共同相続人の1人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分には影響をを及ぼしません。
 
遺言の威力は?
 
兄弟姉妹には遺留分はありません。
 
そこで、子供のいない夫婦な場合は、遺言を残すか残さないかで、残された配偶者の運命が劇的に変わります。
 
夫(妻)が亡くなって、相続手続きをしようとしたとき夫婦に子供がいなく、親も既に亡くなっている場合、夫(妻)の兄弟姉妹も相続人であると初めて知らされる人は意外に多いのです。
 
更に、兄弟姉妹も既に亡くなっていると、その子(甥・姪)が相続人として登場します。
 
葬儀にも出席しなかった甥・姪と遺産分割の協議をすることになり途方に暮れる人も珍しくありません。被相続人(亡くなった人)が生前に甥・姪と交流があったならまだしも、全く面識がなかったというような状況(例えば、被相続人の異母兄弟の子等)では、相続分全額を支払わざるを得ないでしょう。
 
遺言で、「財産は全て配偶者に相続させます」と定めるだけで、遺留分のない兄弟姉妹は一切の異議申し立てができません」。
 
 
 
次回は、配偶者居住権について解説します!
 
*参考資料=「一般社団法人日本遺言執行士協会」