2024/6/10
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「配偶者居住権」について考える~その1 配偶者居住権の要件と効果について |
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配偶者居住権ってどんな内容ですか? 「配偶者居住権」とは、配偶者の居住権を保護しつつ、将来の生活のために一定の財産を確保させる必要性の応じた権利です。 【要件】 ①被相続人の配偶者であること。 ②被相続人の財産に属した建物(被相続人が配偶者以外の者と共有していた場合を除く)に、相続開始時に居住していたこと。➡被相続人との同居の有り無しは要件でない。 ③「遺産分割協議」か「遺贈」か「家庭裁判所の審判」で配偶者居住権を取得したこと。 【効果】 ①当該建物(以下「居住建物」という)全部についての無償使用、収益権の取得➡相続時に配偶者居住権の財産的価値に相当する金額を相続したものとされる(配偶者の具体的相続分から控除される)。 尚、配偶者が居住建物を第三者に使用収益させる場合は、所有者の承諾が必要です。 ②存続期間は、配偶者の終身の間までが原則です。 例外は、遺産分割協議、遺言又は家庭裁判所の審判による別段の定めがある場合です。 ③居住建物所有者の登記義務が発生します➡配偶者居住権は、登記をしないと第三者に対抗できませんので注意が必要です。 ④配偶者居住権を譲渡することはできません。 ⑤帰属上の一身専属権でありますので、換価できず、差し押やその他強制執行もできません。 *「一身専属権」=その人個人しかもつことのできない、権利や資格を言います。 例えば、遺言執行士資格や宅地建物取引士資格とか、年金などの一身専属的な資格がこれにあたります。 これらは、自分が持っていても子供に相続させることや、自由に譲り渡すことなどはできません。これは、成年後見人についても同じで、成年被後見人が持つ固有の権利(この場合は、遺言を遺したり、養子縁組をしたりすること)は本人にしかできないものとなります。 ⑥居住建物につき、配偶者に善管注意義務が発生します。 *「善管注意義務]=善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ)とは、「取引をするときに一般的・客観的に求められる程度の注意をしなければならない」という注意義務のことをいいます。正確には「善良なる管理者の注意義務」を指し、民法第400条の条文に由来する言葉です。 ⑦居住建物の増改築はできません➡但し、所有者の承諾がある場合のみ可能です。 ⑧居住建物の使用収益に必要な修繕は可能です。 ⑨配偶者は通常の必要費を負担しなけらばなりません。 ⑩婚姻期間が20年以上の被相続人の配偶者へ、被相続人が配偶者居住権を遺贈した場合は、被相続人が特別受益について持ち戻しを免除する意思表示をしたものと推定されます。 *「特別受益」=相続人の中に、被相続人から遺贈や生前贈与によって特別の利益を受けた者がいる場合に、その相続人の受けた贈与等の利益のことです。 *「持ち戻しを免除」=持ち戻し免除とは、被相続人が特別受益を持ち戻す必要がない旨の意思表示をすることをいいます。 次回は、配偶者居住権の消滅原因と消滅後の効果・配偶者短期居住権について解説します! 参考資料=「一般社団法人日本遺言執行士協会」 |
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