2024/6/20

「特別の寄与」について考える~相続の放棄・相続の欠格事由・廃除の解説を含みます

「特別の寄与」って何でしょう・・・誰が該当するの?
 
被相続人(亡くなった人のこと)に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び民法第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。
 
以下、「特別の寄与者」という)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金額「特別の寄与料」の支払いを請求することができます。
 
例えば・・・兄弟2人がいた場合、弟の配偶者が被相続人の面倒を見ることは、結構よくありますよね。
 
 
 
 
「相続の放棄 ①」相続放棄とは、相続の権利を放棄して遺産を一切受け取らないことをいいます。
 
亡くなった人の遺産は、配偶者や子供など相続人が相続します。
 
ただし、相続人は必ず遺産を相続しなければならないわけではなく、相続しないこともできます。

相続放棄した人は最初から相続人でなかったことになり、他に相続人がいればその人たちだけで遺産を分け合うことになります。

 

「相続の放棄 ②」=相続放棄をすると遺産を一切受け取ることができなくなります。

それでもあえて相続放棄をした方がよいケースがあります。たとえば次のような場合です。

  • 故人の借金の返済を免れたい
    • 故人に多額の借金があった
    • 故人が誰かの借金の連帯保証人になっていた
  • 遺産相続のトラブルを避けたい
    • 事業承継のため特定の相続人に遺産を集中させたい
    • 遺産が少ないので煩雑な手続きやトラブルを避けたい

このような場合に相続放棄をすることが効果的な場合もあります。

 

「相続の放棄 ③」=相続放棄は他の相続人にその意思を伝えるだけでは手続きとして不十分です。

相続があったことを知ってから3か月以内に家庭裁判所に申し出なければなりません。

相続開始を知ったときとは、通常、被相続人の死亡日と同じと考えられるため、死亡日から3か月以内と覚えておくとよいでしょう。

この3か月という期間は、遺産を相続するか放棄するかを考える熟慮期間とされています。

この期間で故人の遺産や借金の額を調査して、相続するか放棄するかを判断することになります。

 
「相続の放棄 ④」=相続放棄をしたい人は、亡くなった被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申し出ます。

相続放棄を申し出ることができるのは相続があったことを知ってから3か月以内です。

通常は、死亡から3か月以内と考えて差し支えありません。

 

「相続の放棄 ⑤」=故人の借金の返済を免れるために有効な相続放棄ですが、相続放棄をするときには次のような点に注意しなければなりません。

  1. 生前に相続放棄をすることはできない
  2. 先に遺産を処分すれば相続放棄はできない
  3. 相続放棄は原則として撤回できない
  4. 相続放棄した人の子は代襲相続できない
  5. 思わぬ人が相続人になる場合がある
  6. 相続人不存在になる場合がある
  7. 相続税の計算では相続放棄はなかったことになる
 
「相続の放棄 ⑥」=相続放棄をした人は遺産を一切受け取ることができませんが、死亡保険金、死亡退職金、遺族年金などは受け取ることができます。
 
これらは故人の遺産ではなく相続の対象ではないからです。

ただし、死亡保険金、死亡退職金は相続税の課税対象になります。

死亡保険金と死亡退職金には非課税限度額がありますが、相続放棄をした人には適用されません。

したがって、相続放棄をした人が受け取った死亡保険金、死亡退職金は全額が相続税の課税対象になります。

 

 

「民法891条の規定=相続欠格事由 」=第891条次に掲げる者は、相続人となることができません。

  1. 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者。
  2. 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
  3. 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
  4. 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
  5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
「相続欠格事由の効果」
 
・相続人から除かれる。
 
・遺留分の請求権も喪失する。
 
・遺言の受遺者としての能力も失う(民法第965条)。
 
・相続開始以後に、第1号に関して確定判決が出た場合やその他欠格原因が発覚した場合、相続開始時に遡って、相続資格を失う。
 
・欠格者に子又はその直系卑属がある場合、欠格者の相続権は代襲される第887条)。
<dl><dd>即ち、欠格者は相続において死亡したものとみなされているのと同様です。</dd></dl><dl><dd></dd></dl>
 
「廃除の意味」=相続廃除は、遺留分を有する推定相続人(配偶者、子、直系尊属)に非行や被相続人に対する虐待・侮辱がある場合に、被相続人の意思に基づいてその相続人の相続資格を剥奪することができます。

法律上定められている廃除事由には、「虐待」「重大な侮辱」「著しい非行」の3つがあげられます。

  1. 「虐待」とは、被相続人に対する暴力や耐え難い精神的苦痛を与えること。
  2. 「重大な侮辱」とは、被相続人の名誉や感情を著しく害すること。
  3. 「著しい非行」とは、虐待・重大な侮辱という行為には該当しないものの、それに類する推定相続人の遺留分を否定することが正当といえる程度の非行をいいます。例えば、犯罪、服役、遺棄、被相続人の財産の浪費・無断処分、不貞行為、素行不良、長期の音信不通、行方不明等が挙げられます。

参照:民法892条

 

「廃除の効果」=生前であれば、相続人廃除が家庭裁判所の審判手続きで確定したとき、相続人資格喪失の効果が発生します。

遺言で相続人の廃除の意思表示をした場合には、家庭裁判所の審判が確定した時点で、相続開始時にさかのぼって相続人の資格を失います。

また、推定相続人の廃除があった場合も代襲相続が認められています

 

「廃除の仕方」=被相続人が生前に廃除を申立てる場合は、家庭裁判所に自ら審判を申立てる必要があります。

廃除相当かどうかは家庭裁判所が判断することとなります。

また、遺言により廃除の意思表示をしていた場合は、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の審判を申立てます。

一度家庭裁判所で廃除が相当とされても、被相続人は生前であればいつでもこれを取り消すことができ、この取り消しの請求も家庭裁判所に対して行います。

 

 

次回は、死後事務委任契約について解説します!

 

参考資料=「一般社団法人日本遺言執行士協会」